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「夢」がないと社会から認められない?
小さな欲から導き出す、私らしい夢の描き方

Work Life Integration

「夢」がないと社会から認められない?
小さな欲から導き出す、私らしい夢の描き方

就活の面接や職場のキャリア面談で「あなたの夢は何ですか」と問われて、答えに困った経験はありませんか?そんな「夢」にまつわるモヤモヤを解消するために、『世界は夢組と叶え組でできている』の著者である桜林直子さんにお話を聞きました。

考え方屋さん
桜林直子

株式会社サクアバウト代表。2011年にクッキー屋「SAC about cookies」を開業する。自店のクッキー屋の運営のほか、店舗や企業のアドバイザー業務などを行う。noteにてコラム、エッセイなどを投稿、連載中。2020年よりマンツーマン雑談企画「サクちゃん聞いて」を開始。2020年3月にダイヤモンド社より著書『世界は夢組と叶え組でできている』発売。

q&d編集部
前田瑞歩

兵庫県出身。学生時代は米国留学や、11か国240人と船旅をする内閣府国際交流事業に参加。関西学院大学国際学部を卒業後、パナソニックに入社し、家電海外マーケに従事しながら、社内起業家として事業開発に挑戦中。2021年度Panasonic Young Leaderに就任。経産省・JETROのイノベーター育成プログラム「始動」6期シリコンバレー選抜者。趣味はグラレコ。

目次

応援してもらえる「夢」じゃないとダメ?

私は今、社内起業家として「夢」を追う生き方をしていて、そんな生き方を前向きに捉えています。一方で、「夢」という言葉との向き合い方については、今でも試行錯誤を繰り返しています。

 

小学校の文集では「将来の夢」を書くことを求められ、進学や就職の面接では「あなたの夢は?」と問われる。SNSでも、夢を語る言葉や、そのプロセスを伝える投稿などが目につくと、「私は応援してもらえるような夢を持つことができているだろうか」と自問してしまったりもする。こうした経験から「大きな目標や尊敬される夢を掲げないと、社会から認められないのではないか」と感じ、モヤモヤしていました。

 

また、就活期には「夢とかやりたいことって、そんなにないんだよね」という悩みを周りから聞くことが増えました。「夢を求める社会に対して、どうして自分は夢を持てないのだろうか。夢なんて考えられる状況ではないのに、どうすればいいのか」と、夢について問われるたびに苦しさや生きづらさを感じる人が多いことにも気付きました。

 

夢とは、本来ポジティブな言葉であったはず。それなのに、なぜこんなにも人を悩ませてしまうのか。今一度「そもそも夢とは何なのか?」を問い直し、「夢と仕事、夢と私の関係」を考えてみる――私たちは夢に縛られすぎず、より自分らしい生き方を選択できるようになるには、それが必要なのかもしれません。

 

今回、そんな夢にまつわるモヤモヤを晴らすために、『世界は夢組と叶え組でできている』の著者である桜林直子さんを訪ねました。

 

桜林さんはこれまで、「やりたいこと、夢がない」という人に向けた発信を積極的に行ってきました。しかし、自身のライフステージの変化に合わせて、夢の捉え方が少しずつ変化してきているそうです。そんな桜林さんと、これからの時代に合った「夢」「ライフ=くらし」「ワーク=しごと」の捉え方、そして付き合い方について、じっくりと語り合いました。

自分の内にある思いではなく、他人から評価されるものを語ってしまう

そもそも「夢」とは何なのでしょうか――私が抱えているモヤモヤの背景を伝えながら桜林さんにそう尋ねてみると、柔らかくも、スッと芯の通った言葉が返ってきました。

桜林直子さん(以下、桜林)

よく言われる「夢」とは、将来の目標となる旗のことですよね。その旗を立てるのが得意か苦手かは、ただのタイプの差です。そこに良いも悪いもないと思います。

 

それなのに、世の中では旗を立てるのが苦手な人は「夢がない」と言われることが多い。これって「あるべきものがない」というふうに聞こえてしまうから、「欠けたものを足さなくちゃ」と不安になってしまいますよね。でもそれはタイプの話であって、本来は「ある/なし」で捉えなくていいんです。

「夢がない」のは“人として不足している”のではなく、その人の性質の話でしかない。桜林さんの言葉を聞き、この構造を理解しておくだけでも、夢にまつわる息苦しさは、かなり和らぐのではないかなと感じました。

 

とはいっても、旗を立てるのが苦手な人たちにも、就職活動など、夢や目標を語らないといけない場面があります。桜林さんはそういった「夢を語らされる場」には、違和感を覚えるそうです。

桜林

そもそも、無理に夢を言わせちゃうような場自体が良くないと思っています。そういう場があると「夢を言えなかったからダメ」「言ったらそれを絶対にやらなきゃいけない」といった考えに、縛られやすくなってしまいます。

 

しかも、夢がないなりにも話そうとすると「相手に選ばれるための夢」を語ってしまいがちですよね。これを繰り返していると、自分の内側から出したものではなく、他の人から評価されるものを「夢」という形で語るのが上手になる。この癖がつくと、自分の本当の思い、本当にやりたいことが、どんどん見えにくくなってしまうんです。

夢を語れるようになっても、それが他の人の基準で見たときに評価されやすい夢でしかなければ、かえってその夢に自分が縛られてしまったり、自分の思いがわからなくなったりしてしまう。私も「もっと評価される夢を持ったほうがいいかも……」と考えたことがあったので、この桜林さんの指摘にはかなりドキッとしました。

日々の小さな欲を認め、つないだ先に見えるもの

ここまでのお話で、夢とは「将来の目標となるような旗」であり、自分の本心から出たものでないのなら無理やり立てなくてもいい、ということが分かってきました。一方で、「今は苦手だけど、うまく旗を立てられるようになりたい」と願っている人たちは、私の周りにもたくさんいます。そんな人たちに向けて、桜林さんは「夢=旗を立てる行為」を「欲」と関連づけて考えてみたらどうか、と提案します。

桜林

ちょっとした「やりたいこと」、つまり「欲」の延長線上に「夢」があると思うんですよね。日々湧き上がる小さな欲について考えることと、夢について考えることは、実はつながっているんじゃないでしょうか。

 

欲がまったくない人はいないはず。だから「小さな欲=やりたいこと」を大事にしていったら、その“やりたいこと”が積み重なって「夢」になっていくこともあるんじゃないかなと思うんです。もちろん、望まないのならば無理に探さなくてもいいですしね。

 

偉そうなことを言っていますが、私もずっと、自分の欲を知るのが苦手でした。だから、今まさに練習中なんです。

そう言って微笑む桜林さんは、シングルマザーということもあり、長らく、まずは生きていくためお金を稼がなくてはいけないという余裕のない環境下にいました。そのなかで、自分の欲、やりたいことを後回しにし続けてきたといいます。

桜林

そんな期間が長かったから、自分の欲を押さえつけるのが上手になってしまったんですよね。最近、娘が大学生になって家を出て、少し余裕ができてきましたが、いざ「私のやりたいことって何だろう」と考えようとしても、なかなか出てこなくて。

 

「自分の欲にフタをして我慢をすること」に慣れすぎて、それがクセになってしまっている人って結構たくさんいるんじゃないかなと思います。でも、そのフタは自然に外れるものではないから、外すにもやっぱり練習が必要なんですよね。

一体どんな練習をすれば、欲を閉じこめているフタを外し、自分の中にある欲をすくい上げられるようになるのでしょうか。桜林さんは、自分の欲は自分にしか分からない。だからこそ「欲の“認め力”を磨くことが大事」だと教えてくれました。

桜林

どんなに些細なことでもいいから、湧き上がってきた欲——「自分はこうしたい/したくない」という気持ちを「望んでもどうせできない」などと否定せず、できるだけ素直に表に出していくこと。仮に表に出せなくても、「こうしたい/したくないと思ったんだな」と、自分の欲の存在を認めてあげる。これを意識して練習していくと、より生きやすくなるように感じています。

 

小さな欲をお団子だとすると、たくさん外に出していくと、つながりや共通点としての“串”が見えてくる。“串”が見えると、「どうやら自分はこういう方向性の欲を持っているんだな」「こういうことを大事にしているんだな」と自分の欲や価値観の傾向が掴めるようになり、目の前だけでなく、ちょっと先にある欲を見つけるのが上手になるんですよね。

 

やりたいことや夢って、この自分の価値観の芯となる“串”に刺さるお団子(欲)のことなんじゃないかな、と思います。だから、“串”がどこにあるか掴めていないと、「やりたいことや夢」を見つけることは難しい。自分が何を大事にしているのか、“串”のありかを掴むためにも、まずは「小さなお団子=日々のくらしから湧き上がる欲」を認めて、数を増やしていくことが大事なんです。

「夢」は突然生まれた特別なものではなく、小さな欲を集めた先にあるもの。「日々のくらしで生まれる小さな欲を認めること」が、やりたいことや夢につながっていく。

 

桜林さんの考えを聞いて、「夢」という言葉をより身近に、より手触りのあるものとして捉えられるようになりました。

夢の「ワーク縛り」を解いていこう

従来「夢」と言えば、「ライフ=くらし、プライベートの願望や理想」ではなく、「ワーク=仕事での目標」とのつながりが強かったように感じます。私自身、幼い頃も就活時も、「夢は?」と聞かれたときの答えは、いつも仕事に直結するものでした。

 

「小さな欲の先にやりたいこと、夢がある」という捉え方は、こうした「ワークと結びついた強い夢」とは、少し方向性が違うように思えます。そんな感想を伝えてみると、桜林さんは「夢と仕事を常にセットで考えなくてもいいのではないか」と指摘します。

桜林

お金がたくさん欲しい、健康的な生活がしたい、人に認められたい……欲の形は人それぞれなのだから、そこに紐づく夢の形だって多様でいいはず。それをワークの文脈で縛ってしまうと、「くらし」に近い欲や夢が意識から外れがちになる。その結果、自分が心から何を求めているのか、見失ってしまうこともあると思います。

 

仕事は、欲や夢と結びつけやすい要素ではあります。ただ、仕事はあくまでも時間の使い方の一つの要素で、欲を満たしたり、やりたいことを実現する「手段」である、という前提は忘れずに持っておけるとよいですね。その職業につくことが目的ではなく、仕事を通して何をしたいのかが見えていたほうがいいです。お金を稼ぐことを目的にしても、何にお金を使うのか考えると、仕事とくらしの循環は切り離せません。

夢の「ワーク縛り」を解いてあげることで、自分がこれからどうしたいのか、どう生きていきたいのかが、今まで以上に考えやすくなりそうです。桜林さんは続けて「やりたいことや夢と、仕事やくらしを現実的につないでいくためのコツ」を教えてくれました。

桜林

「欲」「できること」「変えられない性質」「望んでいる生活」――この4つの要素を整理しながら全部書き出してみる。そうすると、どんな状態でいたいのか、そのためにどんな仕事をするか、日頃のどんな行動を変えていけばいいか、ということが見えやすくなってくるはずです。

 

今まで話してきたように、まずは「欲」を認めてあげることが大事です。ただ、それだけだと「お金が欲しい」「遊びたい」「休みたい」と欲だらけで収集がつかなくなってしまう(笑)。「欲」を、先ほど挙げた要素の残り3つと一緒に並べて「さあ、どうしようか」と考えると、限りなく現実的な「やりたいこと」を把握しやすくなるんじゃないでしょうか。

4つの要素で自分の仕事やくらしを見直していくことは、ワーク(仕事)とライフ(生活)を対立するものと捉えず、統合していこうとする「ワークライフインテグレーション」の考え方とも、ぴったり重なりそうです。

桜林

人の人生って、4つの要素「欲」「できること」「変えられない性質」「望んでいる生活」の循環そのもので、仕事はその循環の中に含まれる行為なんだろうな、と感じています。この4つをバランスよく満たせるようなワークにありつけたら理想的ですよね。

 

4つの要素の内容やバランスは常に変わっていいし、むしろ日々変わっていくものです。今はぴたりとハマっているワークでも、いつか状況が変われば合わなくなるかもしれない。そうなったらまた、そのときの状態に合ったワークになるよう、都度調整すればいいんです。

 

最後に、大事なことをもうひとつだけ。自分のやりたいこと、夢を、周りの人と比べる必要はありません。欲や夢の形は人それぞれで、そこに優劣なんて絶対にないし、第三者が評価できるものでもありません。自分の心からの欲、ぴったりくる夢は、自分にしか分からないものだから、他人の目を気にせず、焦らずにじっくりと向き合ってみてくださいね。

比較や評価から離れたら、心が楽になった

桜林さんと共に進めていった今回の探求では、「夢」の捉え方を広げられただけでなく、やりたいことを探そうとしたとき、どのように考えればいいのかについてのヒントも得られました。

 

「夢は小さな欲から続いているもの」
「小さな欲をとにかく全部出して、欲しいものは欲しいと自分で認めよう」
「『欲』『できること』『変えられない性質』『望んでいる生活』のバランスを考えると、現実的に“やりたいこと”が探しやすくなる」
「欲、やりたいこと、夢を、人と比べなくていい」

 

こうした視点は、「評価される夢を持って、キャリアに生かさないといけない」という思考に囚われていた私の心を、すっと楽にしてくれるものでした。他人の評価を気にせず、「夢」を「自分の欲の先にあるやりたいこと」として捉えることで、もっと自分らしい生き方が見えてくるような気がしています。

 

私もこれから、自分の中の小さな欲にもっと耳を傾けて、どんなバランスでくらしを組み立てていきたいのかを自問し、自分だけのワークとライフのあり方、よりよい夢のあり方を模索していきたいです。

「夢」という言葉に、皆さんはどんなイメージを持っていますか? ぜひ、あなたの“夢観”をTwitterで「#夢観の縛りを解こう」を付けてシェアしてみてください!

Photo by 加藤 甫 および提供写真

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